インターネットの普及によって一般の方の法律知識も相当に進んだ点があると思います。
たとえば、自動車事故の際に保険会社が提示する示談金額が裁判所の認定する損害額よりも相当に低いことが一般的であることについては、多くの方が既に認識し、あるいは示談金の提示を受けた段階でネットで調べることにより認識するようになったのではないでしょうか。
しかし、法律上、解雇が容易に許されるものでないことについては、必ずしも理解は進んでいないように思います。
相談を受けていると、いとも簡単に解雇をする使用者が今だに少なくないように感じます。あたかも「解雇は使用者の自由であり、いつでも、どんな理由でも出来る」と信じているのではないかと思われるケースに接することが少なくありません。
そして、解雇された側も、とくに多少の落ち度があることを自覚されているようなケースでは、「落ち度がある以上、解雇されてもやむを得ないのではないか」「争ったところで、せいぜい、わずかな慰謝料を取れるくらいではないか」などと考えてしまう方が少なくないようです。
しかし、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」無効となります(労働契約法16条)。裁判では、解雇の合理的な理由の主張・立証責任は使用者が負います。さらに懲戒解雇ともなれば、懲戒処分としての有効性も問われます。そもそも就業規則に懲戒処分に関する規定がなければ懲戒処分はその時点で無効なのです。そして、懲戒解雇としてなされた解雇を事後的に普通解雇に転換することは許されないとする見解が有力であり、その旨の裁判例もあります。
このように労働者は法律によって何重にも保護されています。解雇は決して使用者が恣意的になしうるものではないのです。
多くの企業経営者は、労働者を保護する法律を遵守し、あるいは少なくとも露骨に抵触することがないよう努力・工夫を重ねながら、労務管理を行っています。それなのに、一部の経営者が法を無視して、恣意的な解雇を行うことが放置されてよいはずはありません。
不当な解雇や雇止め、内定取消を受けた方の1人でも多くに法的な救済の手段があることを知っていただきたく、このサイトを開設しました。
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弁護士影山博英(大阪弁護士会所属)