フジ興産事件最高裁H15.10.10決定
(労判861号5頁)
〈要点〉
「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」という命題は、使用者は「規則の定めるところに従い」懲戒処分をなしうると述べた国鉄札幌運転区事件最判(S54.10.30)を根拠として、判例であると目されてきました。この命題を明示的に明確に述べたのが、このフジ興産事件最判です。
同最判は、また、就業規則が拘束力を生じる要件として「事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」という見解を明確に述べました。
この見解は、労働契約法7条の「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」という規定に取り入れられています。
〈判文抜粋〉
使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する(最高裁昭和49年(オ)第1188号同54年10月30日第三小法廷判決・民集33巻6号647頁参照)。そして,就業規則が法的規範としての性質を有する(最高裁昭和40年(オ)第145号同43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁)ものとして,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。