山口観光事件最高裁H8.9.26決定
(労判708号31頁)
〈要点〉
懲戒処分の当時、客観的には存在していたが、使用者が認識していなかった事実について、当該懲戒処分の有効性を根拠付ける事実として認めることができるか、という論点について、否定をした最高裁判例です。
そうすると、客観的事実としては懲戒解雇事由にあたる非違行為のある労働者であっても、使用者は雇用し続けなければならないのか、というと、事実を知った後に改めて懲戒解雇の手続を取れば、その有効性については当該事実を含めて改めて判断されることになります。
本判例の事案でも、上告審で争われた部分ではありませんが、使用者は再度の解雇の意思表示を行い、これが有効と判断され、2回目の解雇までの期間の限度で賃金の支払いを命じられています。
〈判文抜粋〉
・・・使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。・・・本件懲戒解雇は、被上告人が休暇を請求したことやその際の応接態度等を理由としてされたものであって、本件懲戒解雇当時、上告人において、被上告人の年齢詐称の事実を認識していなかったというのであるから、右年齢詐称をもって本件懲戒解雇の有効性を根拠付けることはできない。