宝塚エンタープライズ事件大阪地裁S58.6.14判決
(労判417号77頁)
〈要点〉
退職した労働者の退職金請求に対し、使用者が退職届を「預かった」後に懲戒解雇事由が判明し、懲戒解雇したので懲戒解雇の場合に退職金を不支給とする規定に該当するとして争った事案です。
裁判所は、退職届の提出時に退職の合意が成立したことを認定し、その時点で雇用契約が消滅している以上、その後になされた懲戒解雇の意思表示は無効であると判示しました。
〈判文抜粋〉
・・・被告は、右退職届は、単に一時預かっただけで、正式に受理した訳ではないから、その提出による退職は効力が生じておらず、原告らは、その後の懲戒解雇により、被告を退職したものである、との旨主張するが、右のとおり、原告らの右退職届の提出は、被告の退職勧告に基づくものであり、それを受け取るときに被告は何ら留保をしていないのであり、原告らはその後被告に出社していない等右届提出後は退職となったことを前提とする行動をとっている、等の事情に照らせば、右退職届を被告が受け取った時に、原告らが即時被告を退職する旨の合意が成立した、というのが相当であり、従って、その後に被告が原告らに対し懲戒解雇の意思表示をしたとしても、既に、本件雇用契約が右合意により消滅している以上、右懲戒解雇は効力を有しないというべきであるから、右被告の主張も採用できない。…