退職金は就業規則等で退職金を支給することと支給基準が定められており、その基準に当てはめて支給する義務が認められる場合には賃金としての性質を有します。
その退職金について、懲戒解雇の場合には没収し、支給しないことと定めているケースがあります。
そのような場合でも、裁判所は当然に退職金全額の不支給を認めてはいません。退職金の一部又は全部を支給しない条項は、これを適用できるのは、労働者のそれまでの勤続の功を抹消し(全額不支給の場合)又は減殺してしまう(一部不支給の場合)ほどの著しく信義に反する行為があった場合に限るなどとして、制限的に解釈しています。
他方で、逆に労働者に重大な背信行為があった場合には、退職金請求が権利の濫用にあたるとして、退職金減額・没収条項の有無に関わらず、請求を認められないことがあります(アイビ・プロテック事件東京地裁平成12年12月18日判決・労判803号74頁)。