晃和商事事件大阪地裁H3.10.29判決
(労判599号68頁)
〈要点〉
解雇を通告された労働者が、①解雇後出勤せず、②保険証や会社のカギを返却し、③他社に就職し、④退職金の支払を請求した、といった事情があってもなお、解雇を承認したものとはいえないとし、地位確認請求を認容した事例です。
〈判文抜粋〉
原告は、右同日、当面の生活費を得るため、職業安定所に赴いて就職活動を行い、同月二七日頃、カスタムにとりあえず就職した。その後、原告は、同月二九日、被告に出社し、九月分の給料(二五日締め)の支払を求めたが、被告は平均賃金(六月ないし八月)の六割の支払に応じたのみであった。その際、原告は被告の求めに応じて、被告事務所の入口ドアの鍵、保険証を返還し、紛失した社員バッジ代金三〇〇○円を支払った。右返還に応じたのは、鍵を所持していると盗難の嫌疑をかけられる虞があること、被告が解雇した旨を会社保険事務所に連絡すれば、保険証を所持していても使用できなくなると判断したからであった。・・・
・・・被告は、本件解雇が無効としても、原告は、(1)本件解雇後に出勤しなかったこと、(2)九月分の給与を受領し、保険証や被告の鍵を返還していること、(3)本件解雇後、間もなくカスタムに雇用されていること、(4)退職金の支払を請求したこと等に照らすと、原告は本件解雇の意思表示を承認していた旨を主張するが、(1)ないし(4)に至る経緯は前記認定のとおりであるから、右事実をもって原告が解雇を承認したとは到底いえない。