〈手続の概要〉
労働審判は、労働審判委員会が主体となって裁判所で開かれる手続です。労働審判委員会は、裁判官1名、使用者側・労働者側の審判員各1名の合計3名で構成されます。対象となる事件は、個々の労働者と使用者との間に生じた労働関係に関する民事の紛争に限られます。
手続は、原則として3回以内の期日で終了します。審判委員会はいつでも調停を行うことができるものとされ、調停成立で終了する事件が大判を占めています。
実務の運用では(大阪地裁の場合)、第1回期日で争点と事実関係を整理し、第2回期日で調停成立を目指す、というのが一般的な流れです。
第2回期日で終了することを前提とすると、申立から第1回期日までは原則として40日以内とされており、期日間の間隔は通常1か月程度ですから、申立から2か月と10日程度で終わることになります。このスピードが労働審判の大きな特徴です。
調停が成立しない場合、審判委員会は審判を言い渡します。審判に対して不服のある当事者は異議を申し立てることができ、異議の申立があれば、訴訟に移行することとなります。
〈弁護士は何をするのか〉
労働審判は短期決戦です。審判委員会は第1回期日で心証を固めてしまい、これに基づいて第2回期日で調停を試みるというのが一般的な流れですので、申立書等の第1回期日までに提出する書面に、事実に関する主張と法的な主張とを全部盛り込むべきことになります。その作業を弁護士に依頼せずに行うことは、充分な法律知識のない当事者本人には困難といえるでしょう。
弁護士が労働審判申立の依頼を受けた場合、最も重要な仕事の1つは、依頼者から事情を聞き取り、事実関係と法的な問題点を適切に整理し、説得的な論述の申立書を起案することにあります。
期日には、もちろん弁護士が(本人とともに)出頭します。第1回期日での問答も、審判委員会がどのような方向で調停を進めるかを決するにあたって重要な意味を持ちますが、同席した弁護士は、適宜、当事者の言い漏らした重要な事情を補足したり、審判委員の誤解を正したりして、依頼者を援護します。
調停に向けた議論においても、審判委員会が把握した事実関係とその評価を前提として話をされますので、間違った指摘がなされた場合には、法律知識や訴訟の経験に基づいて反論する必要がありますが、それは弁護士でなければ難しいでしょう。