〈事案の概要〉
Cさんは定年退職をした会社に嘱託として勤務していましたが、人材紹介会社の仲介で他の会社の面接を受け、期間1年の嘱託として採用されました。採用時には65歳までは契約が更新されるかのような説明がありました。ところが、入社後、会社は経営判断でCさんの担当とした業務自体を取り止めることにしたとし、Cさんに対して、最初の契約更新前に契約を更新しないことを通告しました。
〈事件処理の結果〉
労働契約法19条に基づく更新を主張し、雇用契約上の地位の確認と賃金の支払いを求めて、労働審判を申し立てました。労働契約法19条の適用の有無について、過去に1回も更新されていないという事情は不利な要素でしたが、他方、採用面接時の説明は有利な要素であり、かつこの説明があったことについて会社側は認めました。
審判委員会は労働契約法19条の適用は認められるが、更新への期待の合理性の程度が弱いことから保護の程度も低くなり、雇止め事由の合理性・相当性の判断は緩やかになるとの見解を示し、当方に譲歩を求めて来ました。
結局、第2回期日で、月給の約4.5か月分に相当する解決金を得て合意退職する内容の調停成立となりました。
〈コメント〉
もともとCさんには職場復帰に固執する意思はありませんでしたし、また、当職から労働審判法19条の適用が認められるか楽観できない事案である旨の説明を繰り返ししていました。それでも、Cさんは「三顧の礼」で迎えておきながら、会社の勝手な都合で「仕事が無くなった」として一方的に首を切られたのでは、一矢報いなければ腹の虫が収まらないという思いを述べて当職に依頼をされました。
解決のレベルは高くはありませんが、次の再就職の話も具体化していたようであり、雇止め後3か月も経たない時点での解決でしたので、結果には満足していただけたものと思っています。