就労の始期が具体的な日付で特定されずに内定通知がなされた場合、そのような内定通知によって労働契約が成立するでしょうか。
この点、就労の始期は労働契約の重要な要素であり、これが特定されていないことは、労働契約の成立を妨げる事情である、という評価も考えられるところです。
しかし、就労開始のおおよその時期は定まっていても、具体的な初出勤日については後日の調整に委ねることとして労働契約を成立させることが当事者の意思であるのかも知れません。そのような場合に単に初出勤日の日付が特定されていないというだけの理由で労働契約の成立を否定することは、その必要性もなく、労働者の保護に欠け、相当でないでしょう。
実際、内定について労働契約の成立を認めたリーディングケースである大日本印刷事件最判昭和54年7月20日民集33巻5号582頁の事案においても、就労の始期を「大学卒業直後」とする労働契約の成立が認められており、就労の始期の具体的日付が特定されていませんが、そのことは何ら労働契約の成立を認める妨げとされてはいません。
したがって、具体的な事情によるでしょうが、内定通知において就労の始期が具体的な日付で特定されていないということのみによって労働契約の成立が否定されるものではないと考えるべきでしょう。