「無期雇用であれば、労働者は、2週間の予告期間を置きさえすればいつでも、一方的な意思表示をすることで退職できるのが民法の原則です」と前のコラムに書きました。では、この「2週間」はどのように数えるのでしょうか。たとえば、6月30日付で退職しようとするとき、労働者は、いつまでに辞職の意思表示をすれば良いのか、考えてみたいと思います。
期間の数え方については民法に規定があります。民法140条によれば、週によって期間を定めたときは、その期間は、午前零時から始まるときを除いて初日を算入しないものとされています。
一般的に、辞職の意思表示を午前零時ちょうどにすることは考え難いので(意思表示している間に午前零時が過ぎてしまうでしょう。)、辞職に必要な2週間の期間を数えるときにも意思表示をした初日は算入しないことになります。
次に、週によって期間を定めたときの期間の終期については、末日の終了をもって満了するものとされています(民法141条)。したがって、期間が「2週間」なら、2つ目の週における最後の日の終了で期間満了となります。
以上を前提とすると、6月16日に辞職の意思表示をした場合、(初日不算入なので6月17日から数えて)2つ目の週の最後の日である6月30日の満了で2週間の期間が満了することになります。
ここで少し注意が必要なのは、「2週間の予告期間で辞職できる」ことの根拠である民法627条1項は、「雇用は、解約の申入れの日から2週間が経過することによって終了する」と定めている点です。つまり、6月30日に2週間の期間が満了したとして、正確には、6月30日が「経過した」ことによって雇用契約は終了します。
だとすると、その場合の退職日は7月1日ではないか、という疑問が生じます。6月30日が「経過した」その瞬間には、日付は変わって7月1日となっているはずだからです。
しかし、ここで考えるべきは、「退職日」とは何であるか、です。
一般的に、X日が退職日であって、Y日(X+1日)が退職日の翌日であるとされた場合、その法的な意味は、当該労働者の労働契約上の権利義務がX日まではあり、Y日からはない、ということでしょう。X日が退職日なら、労働者はX日までは、使用者から出勤を命じられれば出勤する義務があり、Y日からはありません。退職月の給与を日割りで支給することとなっている場合、労働者は、X日までの日数で日割計算した給与を請求でき、Y日以降については日割計算に含めるよう求める権利がありません。
労働者が「6月30日付で退職したい」と考えるとき、頭にあるのは「7月1日から労働者としての地位から解放されたい」ということでしょう。
「退職日」の語がそのような意味であるなら、ある労働者について、6月30日の24時まで労働者としての権利義務があり、日付が変わった瞬間にその権利義務が消滅する場合には、当該労働者の退職日は、6月30日であるとすることが正しいことになるでしょう。
実際、裁判例を見ても、退職届の提出から、2週間後の日付で退職の効果が発生した(12月11日提出、12月25日付退職)(大地判H28.12.13、LLI/DB L07151106)、あるいは、2週間後の日の経過で辞職の効力が生じた(6月29日提出、7月13日の経過で辞職)(大地判H24.11.30、LLI/DB L06751138)などと認定されており、2週間後の日の翌日に退職した旨を述べた裁判例は当職が探した限りでは見当たりません。
以上を踏まえると「6月30日付で退職したい(7月1日からは労働者としての地位から解放されたい)」と考える労働者は、6月16日までに辞職の意思表示をすれば良いものと考えられます。