最高裁は、今般、契約社員(有期雇用労働者)に退職金を支給しないことを不合理な格差でないとする判断を示しました(メトロコマース事件最判R2年10月13日最高裁ホームページ)。
原審東京高裁は、正社員に対する支給基準の4分の1に相当する額を支給しない範囲で不合理であると認めていたのに対し(東高判H31.2.20労判1198号5頁)、これを覆す判断をしたものです。
マスコミも大きく報道しましたので、ご存じの方が多いと思います。
会社が労働者を休業させた場合、平均賃金の6割の支給が必要であることはよく知られていると思います。就業規則にその旨の規定を置いている会社も少なくないでしょう。では、会社は、そのような規定に基づいて、いつでも労働者を休業させて給料の4割をカットすることができるのでしょうか。
2018年労働基準法改正により、一定の範囲で使用者による年休日の指定が可能になりました。すなわち、年休の付与日数が10日以上である労働者に対して、年5日について使用者が時季指定をする義務を負うものとされました(労働基準法39条7項)。法文は単に指定の「義務」を定めたような規定ぶりですが、その反面、指定の「権限」をも与えたものと解されています(菅野和夫『労働法〔第12版〕』571頁)。
従来、年休日の特定方法は、労働者の時季指定によるか又は労使協定に基づく計画年休によるかのどちらかに限られていましたので、大きな変更です。
「同一労働同一賃金」という言葉をよく聞くようになりました。
一部には、文字どおり「同一の業務に従事していれば同一の賃金が支払われなければならない」という法的ルールが導入されたかのように誤解されている向きもあるようですが、そうではありません。
ネット上の法律相談を見ていると、「これってパワハラですか?」と尋ねる投稿をたくさん見かけます。
そのような投稿を見るたびに私が疑問に思うのは、「この相談者は、『パワハラ』だとしたら、どうなると思っているのだろう」ということです。
「退職金は正社員が退職したときに出る(可能性がある)ものであって、非正規社員に退職金はない」という認識は、一般常識の部類に属するのではないかと思います。
ところが、近時、正社員に対しては規程に基づいて退職金を支給しつつ、有期雇用の契約社員に対しては退職金を全く支払らないことが、労働契約法20条に違反し、不法行為にあたるとして損害賠償請求を認めた裁判例が出ました(メトロコマース事件東高判H31.2.20労判1198号5頁)。
労働者を解雇する場合、30日前の予告が法律によって義務づけられています(労働基準法21条1項本文前段)。予告期間が30日に不足する場合は不足する日数分の解雇予告手当の支払を要します(同項本文後段、同条2項)。
では、この解雇予告期間の日数はどのように数えるのでしょうか。たとえば、11月30日付で解雇するためには遅くともいつまでに予告する必要があるのか、という問題です。
不文の規範として「ノーワークノーペイの原則」が認められています。賃金は労務提供の対価なので、就労しなければ賃金債権は発生しないという原則です。
しかし、不当解雇(雇止め)された労働者が解雇無効となった場合には、解雇後の期間について、働いていないのに賃金請求が可能とされています。その旨定めた条文は労働基準法にも労働契約法にもありません。何が根拠でしょうか。
「解雇されました。不当解雇なので、予告手当と慰謝料を請求したいと思います。」
このように申し出て相談に来られた方から話を聞いてみると、「辞めてくれ」と言われて「分かりました」と答えたという経緯であって、解雇通知書をもらっていないばかりか、「解雇」とも「クビ」とも言われていないというケースが少なくありません。
退職金規程において懲戒解雇となった労働者に対しては退職金を支給しないこととされていることがよくあります。このことは、よく知られていて、懲戒解雇の場合は退職金が出ないとの理解は、会社から言われるまでもなく常識として持っている労働者が多いようです。しかし、懲戒解雇の場合、必ず退職金の請求は不可なのか、というと法律的にはそうではありません。
賃金が年俸制の場合について、世間では、勤務成績の不良その他の理由によって使用者が次年度の年俸額を自由に減額できると理解する向きがあるようです。しかし、それは誤解というべきだろうと私は思います。
労働者が解雇無効を争った事件で解決金を得て退職する内容で和解する場合、解雇日を退職日とするケースと、和解日(又は和解日以後の年度末等の特定の日)を退職日とするケースがあります。
その差異はどのような点にあるでしょうか。
使用者が有期雇用の労働者に対し、更新後の労働条件を切り下げることを予告し、切り下げに応じなければ更新を拒絶する旨の通告をするケースがあります。
更新が何度も繰り返されているようなケースでは、労働者の意識の上では、期間の定めは形式的なものに過ぎず、したがって、使用者がする上記のような通告は、一方的な契約の変更であって許されるはずがない、と思われても無理はありません。
労働者が退職するにあたって、使用者から「同業他社に就職しない」「競合する事業を営まない」ことなどを約束する誓約書に署名・押印するよう求められることがあります。このように退職後の労働者に競業避止義務を課す誓約書は、労働者の職業選択の自由を制約するものであることから、その有効性が問題となります。
使用者が違法な人事措置を行い、労働者の従前の職場での就労を拒絶(典型的には解雇)した場合、使用者の帰責事由に基づく労務の履行不能となり、労働者は不就労期間の賃金を請求することができます(民法536条2項)。
労働契約法18条は、有期労働契約が少なくとも1回以上更新され、通算契約期間が5年を超えた場合に労働者に無期契約への転換を申し込む権利を与えています。
同条は、平成25年4月1日以後を契約期間の初日とする有期労働契約について適用されます。
就業規則において、私傷病による欠勤が一定の期間継続したときは休職を命ずること、そして、休職後一定の期間内に復職できない場合には自然退職となると定められていることがよくあります。
使用者が労働基準法37条に基づいて支払義務を負う残業手当を支払わず、労働者がその支払いを求めて提訴した場合、裁判所は、同条に基づいて認められる残業手当と同額について付加金として支払いを命じることができるとされています(労働基準法114条)。残業手当のほかに、解雇予告手当(同法20条)、休業手当(同法26条)、年休手当(同法39条7項)の未払金を請求する場合についても同様です。
退職にあたり、使用者から退職後に残業代を請求しないことを約する誓約書や未払賃金がないことの確認書・念書に署名・押印を求められるケースがあります。
このような場合、労働者としても、応じる義務はないと分かっていても、拒否すれば最後の給料の支払いを保留されてしまうことを恐れ、署名・押印に応じてしまいがちです。
就業規則等によって傷病休職制度が設けられている場合、一定の休職期間中に治癒し就労可能とならなかったときは解雇又は自動的に退職するものと定められていることが一般的です。
労働者の相談を受けていると「就業規則があると聴いたことはあるが、見たことは無いし、どこにあるのか知らないし、内容も全く分からない」という話を聴くことが少なくありません。